ゆとシートⅡ for SW2.5 in 流浪の民

“辺獄の”エーリュシオーネ(ナイトメアフロムリンボ) - ゆとシートⅡ for SW2.5 in 流浪の民
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“辺獄の”エーリュシオーネ(ナイトメアフロムリンボ)

分類:人族
知能
人間並み
知覚
五感(暗視)
反応
敵対的
穢れ
1
言語
公益共通語等いろいろ
生息地
楽園
知名度/弱点値
16/20
弱点
物理・魔法ダメージ+2、命中力+1、行使+1
先制値
20
移動速度
30/-
生命抵抗力
13 (20)
精神抵抗力
13 (20)
攻撃方法(部位) 命中力 打撃点 回避力 防護点 HP MP
武器 15 (22) 2d+20 14 (21) 6 100 80

特殊能力

弱点(ソレイユ生まれ)

 銀の武器に加え、「純エネルギー」属性から受ける物理、魔法ダメージが+2点されます。
 また、吸血鬼としての性質を得ており、太陽の下においては全ての判定に「-2」の修正を受けます。

異貌/反映済
楽園への切符(パラダイス・シフター)/優待券(ファースト)・feat.ヴァンパイア・ノルド・メトセラ

 蛮族ヴァンパイアの力を宿した特殊な麻薬を服用し、身体能力の向上と共に異常な興奮状態にあります。
手番の間、精神効果属性の望まない効果を一切無視します。
 また、この魔物の「穢れ」が3点以下の場合、生死判定に失敗し死亡する度に、「穢れ」を1点増加した後、即座にこの魔物のHPが「現在の「穢れ」*10」点となり、全ての能動的な判定に+1、受動的な判定に-1の修正を受けます。

召異魔法9レベル/魔力12(19)
《足さばき》《不屈》
《限定影走り》

 この魔物は、合計3部位以上からでなければ「移動妨害」を受けず、乱戦内の敵対陣営の部位数が2部位以下なら、「乱戦からの離脱準備」の必要なく、任意に移動によって乱戦エリアから離脱できます。
 この能力は、《影走り》を持つキャラクターが同一座標に存在する場合、無効化されます。

《魔力撃》《薙ぎ払いⅠ》《魔法拡大/すべて》
《魔力撃強化》/他の宣言特技と同時宣言不可

 従来の魔力撃の効果に加え、その近接攻撃の命中判定の達成値を+3します。

《血しぶきの斬撃》/他の宣言特技と同時宣言不可

宣言した近接攻撃1回を[射程:10m]に変更します。

痛恨撃=⑨/+10
蒼褪めた血(ヴァイオレッド・ブラッド)

 戦闘中、戦場内に存在する、この魔物と血縁関係を持たないか、この魔物による支配を受け入れていないキャラクターは、この魔物と達成値の比べあいを行う際、その達成値に-4の修正を受けます。
 この効果は、1Rごとに、条件を満たした始めの1回のみ適用され、対象が一度でもこの比べあいに勝利すれば、戦闘中二度と適用されることはありません。

凍れる血の統御/消費HP20&消費MP5

 この能力は、この魔物が太陽の下にいない場合、1Rに1回、任意のタイミングで発動できます。
HPとMPを消費する事で、自身が受けている望まない効果一つを解除します。この時、達成値の比べあいは必要ありません。

デモンズレギオン

 召異魔法【デモンズレギオン】(⇒『ML』P39)と同様の効果を得ています。
魔神軍勢ポイントは戦闘開始時点で「100点」を有しているものとします。

辺獄の燦華

 同じ戦場に居る「レギオン」という名称を持つ魔物が死亡する度に、この魔物の主動作と宣言特技の回数が1回ずつ増加します。

戦利品

自動
銀灰色の雪華(5400G/緑S),TP16点
2-6
蒼褪めた血(1000G/赤,白S)
7-12
夜天のマント(3200G/金白S)
13-
二つ星の刻まれたブローチ(9520G/金白S)

解説

 『夜天の落胤(ダークナイト・ヘイヴンズ)』最高幹部“フィルター”の一角を担当する、ソレイユ生まれのナイトメアです。
まるで氷のように透き取った青白い肌に、雪原のような白銀の髪を持ち、夜のように黒い衣装をまとい、その中に輝く太陽のごとき赤い瞳を有する、美しい少女です。
 表向きには『エリー』と名乗る冒険者として活動しており、舞台への強い執着から『シンボシ座』という劇場へ頻繁に出入りしている様子が見られます。
 『落胤』内においては、組織がいずれ至るとされる『楽園』を象徴する、偶像としての役割を求められており、その場へと皆を連れて行く、という大義名分を掲げ、『儀式』によって、自身の命令に絶対に従う隷属者を増やし続けています。
 『儀式』に用いられる力は、嘗てアルフレイムに居たとされるさる強大なヴァンパイアの血を利用し、魔法文明時代にあったとと語られる“貴族の支配力(ドミニオン)”という力を不完全ながら再現したものであり、敵対者に対しては逆らう意志を挫くように働き、従うものには強力な加護を与えます。

以下、その経歴について

 本名をエーリュシオーネ・ヘイヴンといい、護衛者カンヌ・クロードと共に、“獄主(ドミネイター)”ヘイヴンの実の娘に当たります。
 17年前、カンヌの母フル・クロードとエーリュシオーネの母オク・ワーゼは、さるノスフェラトゥの氏族に、それぞれに故郷を滅ぼされ、ありとあらゆる実験や戯れの為の『素材』として連れ去られた先で、出逢う事となりました。
 同じ牢獄に閉じ込められた二人は、年も近く、同じ過酷な環境を共有する中で、すぐさま打ち解け、無二の親友となっていきました。
 そんな二人に目を付けたのが、当時研究者としてノスフェラトゥの元に取り入っていた、“獄主”その人です。
ヘイヴンは一方に対しもう一方を人質として取り、『自身の研究の実験体となれば、もう一方の身柄をノスフェラトゥの目から守る』という取引を持ち掛け、どちらもに、自身の研究の被験者となる事を受け入れさせたのです。
 こうして二人は、いずれ〈楽園への切符(パラダイス・シフター)〉へと至る麻薬物質を大量に接種させられ、正気と狂気の垣根をさまよいながら、“獄主”の子をその身に宿すこととなりました。
 そして、絶望の中、互いに互いの存在のみを希望として生き繋いできた二人の前に、ついに光明が見えます。
捕まっていた人々を開放する為、時の冒険者たちがノスフェラトゥへ戦いを挑み、捕まっていた人々を解放したのです。
 しかし、この時、不運にもひどいつわりに見舞われたオクは動けなくなり、ヘイヴンに見つかり、そのまま連れ去られる事となってしまいました。
身重なうえにただの村娘でしかなかったフルに、逃げ遅れたオクの為にできる事など無かったのです。

 結果、そのまま混乱に乗じてノスフェラトゥの元を離れる事に成功したヘイヴンより逃がれられなかったオクは、逃げた罰としてろくに補助もないままナイトメアの子供を出産することになりました。
もとよりの衰弱もあり、鋭くとがった角に胎内を斬り裂かれる痛みと出血に耐えきれず、赤子を産み落とすとともに、彼女は力尽きる事となりました。
 無事に救助され、周囲の手厚い保護の元、母も大事なく元気に誕生したカンヌに対し、誕生とともに親の命を奪い、血だまりの中で産声を上げる事になったこの子供こそが、かつてのエーリュシオーネに他なりません。
その生涯は、最初から血と死によって彩られていたのです。

 その後、エーリュシオーネは、いずれ『夜天の落胤』の幹部となるメンバーから教育を施され、物心つく前よりその目覚ましき才能を発揮してゆきます。
優れた身体能力、戦闘センスは勿論、研究のため生み出された実験体の中でも飛びぬけた薬害耐性、麻薬への親和性を有し、まさしく“獄主”が期待した通りの『作品』として、満足ゆく素養を示し続けたのです。
その代償として、いくらソレイユ生まれとしても極端に日光に弱すぎる、日傘無しで日の下に出られない体質となっていましたが、“獄主”にとっては関係のない事でした。

 本来は自身の子供二人を、ノーブルエルフという種が有したとされる『不滅性』と『絶対性』、それぞれの研究資料とする予定だった“獄主”は、彼女の出来の良さと、カンヌ・クロードを回収しに行くリスクを鑑み、そちらを諦め、エーリュシオーネ一人に、来たるべき楽園の『象徴』としての役割、『支配者』として他者を隷属させる能力、二点を集約することと決めました。
 こうして、『夜天の落胤』の偶像、夜天の空に見上げられる星としてのエーリュシオーネの人格が、“獄主”の指示を受けた“典獄”の主導の元、『作り出される』事となっていきます。

 曰く、自身は選ばれし存在であり、生まれながらにして誰よりも見上げられる星なのだと。
 曰く、世界は全て自身の為に創られた舞台であり、自身がいない世界などありえないのだと。
 曰く、全ての命は自身に捧げられるものであり、誰もにとって、自身へと仕える事は、史上の喜びなのだと。
 曰く、自身の上位者は夜天そのものたる“獄主”のみであり、彼の望むままに振舞う事が、人々を楽園へ導く道なのだと。

 外の常識に触れる事がなく、その必要も感じないまま、少女は異常な常識を当然として受け入れ、常人とはかけ離れた価値観に染まっていきます。他者を理解せず、他者に意味を見出さず。ただ求められるがままに或る、偶像の星として。
 『儀式』として、自身の身体に宿った血の力を使い、縋るものの命、魂さえ縛ってしまう事も、彼女にとってはごく当たり前の日常に過ぎなかったのです。

 そんなエーリュシオーネが、外の世界へ興味を持つきっかけとなったのが、今より数年前、当時“フィルター”として召し上げられたばかりの“煉獄”が持ち込んできた叙事詩、『エウレカの道』でした。
初めて触れる、自分の為に用意されたのではない『物語』は、彼女にとってとても衝撃的なものであり、都合の良くない運命に翻弄されながらも宿敵たる魔神の打倒へと進んでいくエウレカとノーフェイスの強さは、彼女に舞台への憧憬を呼び覚ますには十分でした。

 後に成長し、父である“獄主”の指示通りに冒険者となり、外の世界での活動の自由を得てから、彼女は暇を見て『エウレカの道』を探し求めるようになり……そうして、シンボシ座へとたどり着き、自分と同じようにエウレカの道へ惹かれたもう一人の星、カンヌと出逢ったのです。

 『落胤』の象徴として崇拝を集めるかたわら、シンボシ座の皆や、カンヌとの日々こそ、いつしかエーリュシオーネにとっては最も居心地の良い日々となっていきました。彼らがままならない現実とぶつかり、それを乗り越えていくたびに、彼女もまた成長し……そして、次第に自分の積み重ねてきた行いの意味に、気づいていくこととなりました。

 その最大のきっかけとなったのが、フル・クロードの誘拐です。
父の元から逃げ出した罪人たるフルに告白の場を与え、カンヌの前で事実を打ち明ける事で、『家族』のわだかまりを排し、より親しくなることができる……そういう考えからフルを捕らえ、意気揚々とサプライズパーティの計画をしたエーリュシオーネは、普段通りを装いつつも焦燥していくカンヌや、そんな彼女の状態を察しつつも触れられないシンボシ座の面々……そして、その一件に強く責任を感じ、悔しむ護衛者たちの姿を見て、自分の思い違いに気付きます。

 そして、ハイドナーに続いてムカウが命を落とし、それらしい組織のように取り繕われていた『落胤』の荒廃が始まるとともに、自分たちの行いで何の罪もない人々が苦しんでいる事実を避けようもなく目にし、今まで自分が何をしてきたかを思い知らされることとなったのです。

 ――しかし、今更気付いた所で、どう引き返せるというのでしょうか?
彼女は既に自身の血の力で、ゆうに三桁に登る数の人々を支配し、死をもってしても解放されない永遠の従属を幾度となく強制してきました。
 自覚のないまま、どうしようもない弱者たちを食い物にし、偶像として彼らを魅了し、文字通りそのすべてを捧げさせてきたのです。
今となっては皮肉なことに、他者を支配する力に、誰よりも彼女自身が縛られてしまっていました。

 そうして、本当に自分が焦れる光明の待つ道へと背を向け。
夜天に輝くただ一つの太陽(スタァ)として、辺獄の燦華は、崇められる者たちの手により星のない夜天へ縛り上げられ、燃え落ちるその時まで、偽りの楽園の夢を魅せ続けるのです。

製作者:瓶底眼鏡

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