その少年は家族が好きだった。
その少年は野球が好きだ。
ある日を境に家族が引き裂かれた。
12の時に父親はどこかへ消えて行った。
12の時に母親は病に倒れて働けなくなった。
２人の下の子はまだ10歳にも満たない。
だから僕はやるしかない。

１人の大人と２人の幼い子。そして育ち盛りの自分。圧倒的に金がない。
野球選手になってお金を稼いで３人を養う。美味しいご飯をお腹いっぱい食べさせる。
今は野球の練習して、バイトをして今日を食つないでいかないと…。

少年の過去は壮絶だった。お金を稼げるのは少年しかいない。
白球を追い、白球を打ち。少年は努力の上で「天才」、「エース」などと呼ばれる逸材までに育った。
エースで主砲級の力を持つ少年は、野球のトレーニングをしつつもバイトをかけ持ちして生活をする。
生活の楽しさは毎日のバーゲンセールと野球にしか見出せずに…。
少年は、今日も家族のために休みなくバイトを行う。
記された手帳には、毎日バイトの時間を記して…。

元々は、ユーシズ国内で生まれ、育ってきた。
あいにく、魔術的才能はあまりなく、魔術にも興味はなかった。
家自体もごくごく一般家庭で育っていた。
父親に連れられて見た野球に心打たれ、野球を始める。
日や野球に打ち込み、「天才投手」と言われるまでの逸材まで言われるほどの選手になった。
こうして、職業野球。民衆の娯楽1つ。その道のプロを目指していく。
少年が12の頃。父親が失踪した。
元々は綺麗なもの、美しいものが好きな父親が忽然といなくなった。
それと同時に、母親が倒れた。医者に見せると、「原因不明」と言われ。
神官たちに見せても「現地点で治すすべがない」と言われる。
働き手がいなくなり、少年の家にお金が無くなっていく。
少年は職業野球人(いわゆるプロ野球選手)を目指しつつ、バイトをして家族を養っていく。
家族の見えない位置では、自らの食費を削り、日夜練習していく。
家族の前では、兄として、1人の父として、家族に手料理を含まっていく。
ある日、ラゴニアの村の事を知る。そして閃く。
危険だとわかっている。冒険者稼業にもその身を投じることを決める。
家族と共にラゴニアの村に移住する。
表向きは、母親の療養と称して。