娯楽の少ない村の中で、ほぼ唯一の娯楽が歌であった。
とはいえ聞かれるのは恥ずかしいらしく、心を許した人くらいしか聞かせたことはない。
眠い時や気を抜いた時など、鼻歌が漏れることはある。

楽譜や楽器に触れると既視感(デジャヴ)を引き起こす事が極めて多い。その為か、初めて触る楽器でもひとまず音を出してメロディを奏でることができる。
「だいたいの楽器なら70点くらいで演奏できるよ。前世の記憶頼りで演奏しようと思うと30点くらいだけどね」とは本人談。
演奏方法が分かっても、練習はちゃんと必要らしい。

使用する魔法は主に［森羅魔法］。
出力・効果共に一般的な森羅魔法と変わらないが、主に攻撃的効果を齎す魔法を使用する際、ヤドリギを削って作成した短矢を追加の触媒とするなど、細部に独自の発展が見られる。

出身はブルライト地方“水の都”ハーヴェス近郊にある、薬草の栽培地として有名な村。
両親は物心ついた時から不在で、主に村長や魔女(自称)の少女に預けられて育つ。
よく村に遊びにきていた5つ年上のリカントの少年と親交を深め、本人も気づかないほど微かな恋心を抱いていた。

12歳になったある日、


約束を守るため、憧れの背中を追い続けるため。
少女は、［冒険者］になることを決めた。

ある日、
不鮮明な写真でのみ残されていた、“両親”の写真。

最後に見たのは、泣きながら抱き合う親子の姿。

あぁ、よかった。
ちゃんと、君は会えたんだね。

…………それからのことは、よく覚えていない。

だから、少女は今日を駆けていく。
いつかこの心臓が止まる時までに、“何か”を成すことができたのならば。

―――きっと、あなたに胸を張ってまた会えるから。

出力・効果共に一般的な森羅魔法と変わらないが、ヤドリギに加えて樫を霊木と定める、攻撃的効果を齎す魔法を使用する際、ヤドリギを削って作成した短矢を追加の触媒とするなど細部に独自の発展が見られる。
精霊と交感する際、［歌］を媒介にすることも多い。