〇冒険者セット／100G 　　　　……　　背負い袋・水袋・毛布・たいまつ6本・火口箱・ロープ10m・ナイフ
　　〇着替え／20G　　　　　　　　……　　ちょっと豪華な一週間分のお着換え

　
　　〇スカウト用ツール／100G　 　……　　解除判定をペナルティ無しで行う
　

　　
〇騎獣レベル２　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　〇ホース（レンタル）／250G 　……　　騎乗用の馬（参照　ET.154P）
　

　
　　早逝したワシントン伯爵の前妻のただ一人の娘である。母方のほうがアルヴであった。
　　社交界の多くの隣人たちはアルヴに対して寛容であった。
　　彼女の容姿を気味悪がることなく母親と同様に差別なく扱ったのだ。

　　しかし、後妻としてワシントン家に嫁いだタマモはそうではなかった。
　　表立って言う事はなかったが、些細な嫌がらせをインディペンデンスに対して行った。

　　手始めにインディペンデンスをサイレックにある別荘へと移させた。
　　ワシントン家は領地こそサイレックに持っているが本拠があるのはまた別であった。
　
　　サイレックオードの中心地であり、“地に近い都市”ガザオトリコにその邸宅があった。
　　サイレックの頭上に広がるその浮島は星の中でも最大級の大きさを誇っていた。

　　球体を半分に切りだしたその平面に地上があり、その地底には多層構造の空間が広がっていた。
　　ワシントン家はその地上部分に邸宅を所有している古参貴族であった。
　　インディペンデンスが幼少であったころはこの家で過ごしていた。

　　賢しい後妻は自らがアルヴというものに理解がなく、娘が不気味であることを父エンタープライズに明かした。
　　前妻の娘のことを受け止めるまでの時間が欲しいと願ったのだ。

　　その本音に如何ほどの正直さがあったかは不明だが、父はこれを快諾した。
　　土地や人、文化すら違う遠くヒノイヅルからやってきた新しい妻を不憫がったのだ。

　　サイレックの別荘の生活は、最初こそ苦しいものではなかった。
　　彼女の母親の人の好さは使用人たちにもアルヴへの偏見を無くすほどであった。
　　週末には父も後妻を連れてだが訪れて、家族の時間もあった。

　　父と後妻の間に長男が生まれてもそれを祝い、成長を見守る楽しい生活であった。

　　状況が一変したのは父が病に臥せてのことであった。
　　家内のとりなしは全て後妻が仕切り、父の手がかかることはなくなった。

　　そこからはひどいものだった。
　　手始めに別荘の使用人たちはそのほとんどが解雇された。
　　後妻に同調していた者たちだけが残り、インディペンデンスに好意的な人物は一人もいなくなった。
　
　　タマモは、明確にインディペンデンスを排斥しようとしていたのだった。

　　孤立無援の彼女はほとんど人の手を借りることもできず、
　　別荘内に住まう気味の悪い娘として扱われた。中には明確に嫌がらせをする使用人も現れたほどだ。

　　数年後に父は病から立ち直ることなく他界した。
　　病に臥せって以降一度たりとも顔を合わせることはできなかった。

　　父の死後、タマモの横暴は日に日に増していった。
　　ワシントン家の財を浪費し、ガザオトリコで毎日遊び惚けはじめたのだ。
　
　　使用人も最低限の人だけが残され、別荘には人の立ち入りも極端に減った。
　　後妻に忠実な使用人が、自分の遊びのために別荘を勝手にふるまうこともたびたび起こった。

　　そこでただ諦観することもできた。が、――インディペンデンスは諦めが悪かった。
　　別荘の人数が減ったことで、外にこっそりと出入りすることができるようになったのだ。

　　残った使用人の生活サイクルを日々監視し続けた、その成果だった。
　　最初に行ったことは、まずガザオトリコへの連絡の伝手を手に入れることだった。

　　ハルーラを信仰していた父のおかげで、神殿でも交友があった司祭にまずは助けを求めた。
　　司祭はここ数年の彼女の事情についてを知ると驚き、そして憐れんでくれた。

　　行動はついに実り、ガザオトリコの父の友人たちにコンタクトをとることに成功したのだ。
　　彼らは長らくタマモによって父と会うことを断られ続けており、自分たちから行動することができないでいた。

　　その人物たちの中に、インディペンデンスの未来の成否を決める人物がいた。
　　父の従兄弟である裁判官のジョージであった。

　　彼は以前からタマモの動向を疑問視していた。
　　身内である自分ですら、父エンタープライズの見舞いに赴くことを許されなかったからだ。

　　彼はインディペンデンスと接触することに成功すると、他貴族への保護を提案した。
　　しかし、幼い貴族の娘は、その提案を拒否した。ワシントン家こそ、自分の家なのだから、と。

　　一枚の書簡を見せるとジョージは彼女の意図を大いに理解した。
　　すぐさまワシントン家と繋がりが大きかった人物たちとともに行動を開始した。

　　ジョージの取り成しにより、ガザオトリコで裁判が始まった。
　　突然の出廷を呼び出されたタマモは寝耳に水であった。
　　そこにインディペンデンスが現れると、驚きと怒りをもって迎えた。

　　その裁判は、財産相続に関するものであった。
　　後妻のタマモと父エンタープライズの間には息子がおり、タマモは父からの口頭の遺言があったことを主張した。
　　だが、その主張した内容通りの遺言状は存在していなかった。

　　本来であれば混乱を避けるために書面での遺言状を残し、それを死後開示するのが通例であった。
　　タマモは、自分がまだこの土地に疎いこと、
　　エンタープライズが書面を書ける状況になかったことを理由に書面の不在を主張したのだ。

　　その主張はあっさりと棄却された。
　　エンタープライズが法廷の場で掲げたのは先にジョージに示した書簡だ。

　　書簡の正体は、ずいぶんと前に認（したた）められた遺言状だった。
　　前妻が亡くなった際に自分の身に何かがあった時のためにインディペンデンスのために残されたものだった。

　　『ワシントン家の財産を長女インディアナ・エンタープライズ・ワシントンに相続するものとする
　　　彼女を家長と定め、よりワシントン家の今後の発展を願うものである』
　
　　この一文から始まる内容はインディペンデンスの正当性を絶対のものとした。
　　裁判はタマモの敗訴で終わり、財産は全て没収された。
　
　　しかし、時間の経過は残酷であった。

　　勝ち取った財産のほとんどはタマモが湯水のように使い果たしており、
　　しかも彼女は他の貴族の男にすでに取り入っていた。
　
　　父との間に産んだ息子や、自分が嫁入りする時に連れ立っていた彼女の実の娘さえ疎んじていたほとに。
　　悩んだ挙句にインディペンデンスは、タマモに一家財産を「貸与」した。

　　そう。使いこんだ資産のうち、確認のとれるものだけではあるものの、
　　ワシントン家の資産を借金としてタマモに与えたのだ。

　　借金返済の監視はジョージによって執り行われることになり、
　　そこに至りようやく、ワシントン家の隣人たちはかの家を守るために動けるようになった。
　
　　そして、現在。
　
　　彼女は家を出た。
　　家長としての主たる役目をこなした彼女は、財産の権利を信頼できるジョージに託した。

　　ジョージはこの行動に異を唱えることはなかった。
　　失われた数年、ワシントン家に彼女の居場所がないことを重々承知していた。
　
　　「いってきなさい。ディアナ。あなたがいない数年くらいは面倒をみましょう
　　　何をするか、何をしたいか。決めるだけの時間があなたには必要です
　　
　　　これからを存分に生きなさい。我が従弟（いとこ）、エンタープライズの分まで」