人間女性の同年代と比較してやや低身長の少女。
その身は蛮族であるが、特徴的な角や翼、尻尾は隠そうともしていない。
また、ノースリーブのトップスやそれを補うマントなど、動きやすい服装を好んでいる。
それでいて女の子らしさを演出するアクセサリーも付けている。

喜怒哀楽のはっきりした表情もよく見られて、正しく子供らしさが出ている。
だが、親しい相手の前や一人の時にはまた違った表情を見せることもある。

幼少の頃は同年代の子と接する機会は少なかったが、素直で分かりやすい性格。
コロコロと表情も変わるが、基本的には子供っぽさが強調されがち。
生まれのこともあり、蛮族らしい凶暴性などは皆無といえ、人族のそれとほぼ変わりはない。
それでも時々、どこか達観したような一面を見せることもある。

竜が好きで、自分もいつか自由に空を飛び回りたいと願っている。
自分自身が竜に乗る才能は無いものの、竜のことを日頃から褒めており、逆に貶す者には攻撃的になる。

過去の出来事もあり、蛮族に対してはあまりいい印象は持っていない。
彼女自身もまた蛮族の一員ではあるものの、そういった凶暴なだけの蛮族と一緒に見られることは疎ましく感じている。
特に翼を持つ蛮族に対しては嫌悪すら抱くこともある。

ルフリオン平原の東部に位置する小さな農村、フェルス村。
人間の他にリルドラケンもそれなりの数が暮らしている村で、彼女はひっそりと生を受けた。
リルドラケンの親から稀に生まれるとされる種族、ハルヴドラケンとして。
周囲の大人からは忌避されることもなく育ち、不自由なく受け入れられていた。
ただし、その身体的特徴故に同年代の子供たちには怖がられてしまいがちで、友達らしい友達には恵まれなかった。
この頃は比較的大人しい性格で、現在のような活発な様子はあまりなかった。

周辺に危険地帯も数多く存在する平原ではあるものの、目立った危険に遭遇することも殆どなく。
時折村の近くにやってくる蛮族や野生動物も、ユランアウルクから派遣された冒険者などが対処することが多い。
そうした平和な村である故に娯楽や刺激も少なく、育ち盛りの少女にとっては少々退屈な日々だった。
農作業や畜産業などで近くの山の森に近づくことはあれども、基本的には村の中で過ごすことが多かった。
そうした"日常"の変化を求めた彼女は、やがて親に隠れて山の中を探検するようになった。
自然の中を歩き回るのは危険と隣り合わせではあるが、自分の中にある冒険心を抑えられなかった故に何度も訪れていた。

そんな彼女の転機とも言える出来事は、山の奥に迷い込んだ時のことだろう。
ひっそりと隠れ住んでいたレプラカーンの少女と出会い、それから一緒に遊ぶようになった。
最初は少し距離感も取り辛い関係だったものの、次第に友人と言える存在となった。
人目を盗んで遊びに行く、危険だがそれがまた刺激に繋がっていた。

彼女と接しているうちに年相応な活発さが出てきて、親を含めた大人たちはその変化に気付くようになっていく。
時々ふらりと村の外に出ていく様子から、一人で出歩いていたことはバレてはいた。
それでも咎めなかったのは、笑顔に満ちた娘の様子と、少しでも世間を知って欲しいという願い故の行動だった。

だが、楽しい日々はあっけなく終わりを告げる。
いつものように隠れて山へ向かっていた時、ふと頭の中に見慣れない風景が過った。
そこは今までの探検でも行ったことがない場所に思えて、気になってその場所を探しに行ってしまった。
それが蛮族たちの領域であり、危険な貴族階級が滞在しているとも知らずに。

彼女が危険地帯に向かってしまったと報告を受けた両親は慌てて追いかけたが、その先で貴族階級──ドレイクと遭遇してしまう。
幸いにもその直前で娘を発見し、近くの茂みに隠れているように指示したために、その時点で娘の存在に気付くことはなかった。
他の村人と比べれば実力のある二人ではあるものの、ドレイクに敵うほどではなく。あっけなく殺されてしまう。
目の前で両親を殺され、圧倒的な絶望感の前に震えることしかできなかった彼女。
それを目敏く発見したドレイクに自分も殺される……そう思ったが、ドレイクは手を下すことはなかった。
とはいえ、ハルヴドラケンであることが露見して、出来損ないとあざ笑うことは止まらなかったが。
ドレイクが去った後に駆け付けた他の村人や派遣された冒険者によって保護されるものの、心に受けた傷はあまりにも深く刻まれた。

天涯孤独となり絶望の底に落ちた彼女は、誰もいない自宅に引きこもってしまった。
度々会いに行っていた友人と連絡を取ることすらなくなり、外部との関わりを避け続けていた。
その後、見かねた村長が彼女の心のケアに繋がることを願い、ユランアウルクの『友愛学校』への短期編入を勧めることとなった。
言われるがままに学校へ入学し、そこで勉学やケアなどに励むこととなった。
一時期は無機質で感情を感じられない印象まで落ちていたが、2年ほどの通学の甲斐もあり、現在は昔に程近い活発さを取り戻した。
それでも、一人の時などに苦し気な表情を浮かべることも無くなったわけではない。

あの時一緒に遊んだ友人は今頃どこで何をしているのだろうか。
確かめたいとは思いつつも、何も言わずに故郷を離れた今更になって確かめるのも負い目を感じている。
そう遠くまで離れている訳ではないから故、またそのうち出会うことはあるかもしれないが……どんな顔をすればいいのか苦しみ悩んでいる。

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