▼生まれた環境：放浪者
▼幼少期の経験：遊び場は森や川　　　　　　▼１回目のハプニング：束縛されることがなかった
▼少年期の経験：無意識の特別な呼吸　　　　▼２回目のハプニング：特別な師に出会えた
▼青年期の経験：迫真の演技　　　　　　　　▼３回目のハプニング：特になし
▼冒険に出た理由：倒したい相手がいる　　　▼信条：【肯定：努力(労働、日常)】【否定：身分(血筋、差別)】
▼矜持/執着：嘘をつかない

　今よりおよそ15～6年ほど前、魔法国家ユーシズ東端に位置する辺境・アルケナス領に生を受ける。
　母はもとよりこの土地に住まうエルフではなく、近辺で暗躍していたさる氏族のさるノスフェラトゥが引き起こした陰謀の被害に逢い、故郷を失った難民の一人であった。
　その出自から、生まれた時より父はなく、幸いにもナイトメアの出産に耐え生を繋いでいた母の手一つで育てられることとなる。

　身寄りのなく、穢れ故に難民として中々受け入れられずにいた母娘に目を懸けたのは、当時の若きアルケナス領主であり、住み込みで働くという名目で、母子共々に、領主の屋敷での生活を許されることとなった。
　環境に恵まれた故か、過酷な出生に対し、カンヌ本人は明るく天真爛漫な人物として育ち、疲れを知らずに野山を駆け回れる頑強な肉体と体力を育んだ。
　一方、果たして何が理由か、この時から既に『顔の表情筋を一切動かせない』という先天性の疾患は顕在化しており、母をはじめとする周囲の大人たちを悩ませることになってゆく。

　そんな疾患を抱えつつも幼きカンヌはすくすくと育ち、やがて領主の創設した教育施設『アルケナス総合養成塾』に入塾、そこで驚異的な才能を発揮し俳優養成科へと歩を進める事となる。
　時にナイトメア故の差別に見舞われつつもそれを溢れる才気と実力で跳ねのけ、塾でもトップに近い地位に躍り出たカンヌであったが、それでも、尚更にそんな彼女の活躍を前にするたび、母親はふさぎ込む一方であった。

　――どうしたら、母に笑って貰う事が出来るのか。
　どれほど明るく振舞っても、その相貌を暗く陰らせる消える事のない闇を消す為の方法を、カンヌは『自分が世界一の役者になる事』と結論付けた。役者としてのカンヌの道に致命的なハンデを背負わせてしまったと母が悔いるなら……そのハンデを背負った上で、自分が誰よりも優れた演者となれば良いのだ、と。

　そしてカンヌは、自分の最も尊敬する、父のように慕うアルケナス領主へ、『世界一の役者とは誰か？』と問うた。
　その問いの答えに挙がった一つの名……それに挑む為、決意するも早く、少女は小さな故郷を飛び出し、“楽園への列車”パラディース・ツーク号へと乗り込む事となる。
　全ては『鉄道劇団白鳥座、フェルマータ・オリオール』その名声、功績を追い、凌駕するために。

　言葉より体が動く、典型的な肉体派・感覚派。しかし一方で論理的な思考能力も備わっており、所謂『動きながら考える』タイプと言える。束縛されるのが嫌いでその場でじっとして何かを待つのは苦手だが、のんびりするのは嫌いではなく、内職や花の世話なども好む。

　表情筋が固まっていて動かない顔面とは裏腹に、感情そのものは非常に豊かでノリが良く、積極的。『つまらない顔するくらいなら、楽しそうにしてた方がいい』という持論を持ち、時に自らが笑いものになってでも周囲を和ませようとする、道化めいた一面もある。

　大それた目標を掲げ、それに挑む気力も十分だが、一方で自分自身を省みない部分があり、『できないものはできない』とすっぱりと切り捨てるドライな面も持っている。無意識化での、己の顔に対しての諦観の現れともいえるだろう。

　確かな才能と恵まれた肉体、それらを活かせる身体能力を持ち合わせ、役者として優れた才能を持つが、台詞を忘れたり、アドリブで勝手なアレンジを加えたりと、プロというには未熟さ、甘さが垣間見える……最も、それを鑑みても、年齢からすれば十分に洗練された域であることは間違いない。

　師として故郷の領主を仰いでいるが、演技や戦士としての教えというよりは、生き方や振舞い方を教わった、父と娘、先生と生徒のような関係に近い。
　一応彼から真語魔法の教えも受けてはいるが、ほぼ何も言わずに故郷を飛び出してきた負い目もあり、現在は封印している。