比較的アルヴに対する理解の多いエルフの村に生まれ、極めて普通の人族として暮らしていた。
ずっと一緒に居ようね、と。また明日、明後日、その先も…と。
幼心に、そんな約束をした。
相手にとっても、自分にとっても、明日の夜ご飯よりはほんの少しだけ大切な、そんな約束。

しかし、その淡い恋心が果たされることはなかった。

いつものように、2人で遊んでいたとき。
《不死神メティシエ》の無知なる信奉者が、アルヴをノスフェラトゥと起源を同じくするものであると断定し、若く、美しかったレイチェルを拉致しようとしたのだ。
さて、繰り返し記述するが。
｢いつものように、2人で遊んでいたときに。｣

その後、詳細は記載しかねるけれど。ノスフェラトゥに至る秘術を得るための被検体にされ、1部の髪の色と片目の視力が変化はしたものの。結果として幼馴染は死に、レイチェルは生き延びた。生きてしまった。
とあるヴァグランツに助けられて、しまった。
その影響か否かは不明だが、現在レイチェルは執事として振る舞い、力ない者を支える影として生きている。
首に巻いたチョーカー(私は忠実なる僕)は、信念に仕えることを意味するのか。運命の奴隷である示唆か。
はたまた、小さく燻る恋心の残滓か、過去への禊か。

不死も、永遠も、バカバカしい。終わらない物語なぞ、ただの悪夢でしかない