奈落の魔域(シャロウアビス)の出現率が著しく高いこの周辺では、国民たちの大部分が、ミラージ共和連邦の議長『レナード』を"鞘の王"と信じていることによって、さほど悲観していないがゆえに大混乱にも陥りがたいという経緯を持つ。(ルルブⅠ、P317)
　ただし、一部の少数派に、彼を王と認めない一派があった。
　ーーその名も、『天外(Heruntergefallen)』(※1)。太陽神ティダンを由来とする──それを破門され、尚も危険思想に基づいた非道を看過し続ける組織である。
　レナードを王と認めず、魔域に晒され続ける日常を自ら打破する為、『不変なる太陽の手によって、終わりなき夜を打ち滅ぼさん』とすることを教義とするその教団は、"魂魄錬成：陽食み"(※2)と呼ばれる異端技術を用いた、ある計画を立ち上げた。
　それが、『"浄罪の剣"鍛造計画』である。
　曰く、奈落の魔域(シャロウアビス)の"核"を因果と定義してを辿り、それを外側から一刀両断せしめるという魔剣。
　それを鍛造すべく"炉"に投げ入れられたシオリの兄弟姉妹だったが、シオリのみは、奇跡的にそこからの逃走に成功。……最後のピースとして重要な"素材"が逃げたとして、教団から追われる身となってしまった。

※1　天外(Heruntergefallen)
　大司祭『バルトルト・レドナーシュ』が教祖を務める、危険指定されている教団のひとつ。
　幾度か、その違法行為の摘発の為、冒険者部隊による捜索及び捕縛作戦が行われているものの、特殊な力を以てしてかは定かではないが、どうも事件解決の糸口はおろか、全容も掴めていないという状況であるようだ。
　ティダンに由来こそしているものの、その神像は"黒く染められた"ーーすなわち、歪んだ信仰として定着した異なる側面のティダン(・・・・・・・・・・)である、とのこと。見たこともない魔法を行使する姿が目撃されたこともあるようだが、何か関係があるのだろうか…？

※2　"魂魄錬成：陽食み"(※2)
　背中に"紅蓮竜"の紋章が刻まれた一族の血と魂を"炉"に捧げる為に編み出された、異端技術の一種であるらしい…とのこと。

　逃走を図った後の道中、家族の命が目の前で断たれたことについて、酷く落ち込んでいた矢先。
　シオリはか細い声を聞いた。耳元で囁くそれを、最初は、家族からの、一人逃げた自らへの恨み言のようなものかと自嘲したが……その男性とも女性ともわからない声は深く、悲しみと慈愛に満ちていた。
　一体あの声は、誰のものだったのだろうか──

　血の繋がらないながらも、兄のように慕っていた大親友『アーノルド・メレント』より、“2日後、ラゴニアに着く“という便りを受けてから10日が経ったある日、「これだけ遅れる上に手紙もよこさないのはおかしいのではないか」と心配になったシオリは、仲間達にアーノルド捜索の依頼を出す。

　“光“によって焼き払われたかのような街、『復興地アタナシア』。生々しい戦いの痕跡が刻まれたそこで、アーノルドは18日にも渡る復興作業に従事していた。それは、既に本来の任務期間を越えていたと言う。
　足跡を追えば、彼はラゴニアに行く道中で、移動に困っていた金髪の神官女性、孤児10名と共に、人攫いの偽馬車に乗っていた。子どもの人身売買を目的とした賊の罠に掛かってしまったのだ。
　既に船に乗って行方を眩ませたという冒険者一行に、下っ端として雇われていたゴロツキ20名。
　港町に潜伏していたゴロツキたちを問い詰めれば、出てきたのは、ーー神はおろか、死をも畏れぬ所業の数々。
　言い知れぬ怒りを抑えながらも、ゴロツキたちを討伐した後、『そこにいるであろう』と石切り場へ向かい、...

　結論から言えば、彼らは発見された。
　───物言わぬ死体の姿と成り果てて。
　捜索期間、3月10日から18日に渡るーー8日目の出来事であった。


　彼が遺した“幻陽のエンブレム“。
　黒い空に、煌々と輝く太陽を瞳のように見立てた装飾が施された紋章を、非業の死を遂げたアーノルドは何のために遺したのか。

　ともあれーー彼を閉ざしていた優しい夜は、既に明け、焦がれていた幻日は、落ちてしまった。
　これより先は、煉獄燃ゆる白日の元を歩む。
　悲しみを乗り越え、進んだ戦道の果てには、一体何が待つのだろうか。

シナリオイメージソング

Aimer／broKen NIGHT／【参考URL: https://youtu.be/ZHAgXEpbJYI 】

“光“によって焼き払われたかのような街、『復興地アタナシア』。件は記憶に新しいが、現状原因も掴めぬまま、約三ヶ月の時が経った。

　そんなとき、同じ方向の、北東山岳地帯の麓に位置する集落『ルタイ』から発令された緊急応援要請。冒険者たちはジョーランドによって招集され、その救援に向かうこととなる。
　
　そこで目の当たりにしたのは、がらんどうの騎士の軍勢ーーその数、”予測不可”。聞けば光の柱と共に現れたそれは、前触れもなくこの地を蹂躙すべく山側からの戦闘を開始し、ラゴニア方面に進軍しようとしていたのだという。
　
　そんな戦乱の中、指揮官に話を聞いていた時──”ヤツ”は現れた。
　天上を割るように出現した瞳のような、あるいは翼のようにも見える”印”より、大地を灼く光華が放たれる。
　それから眩い閃光より視界が晴れると同時に現れたのは、『直立二足歩行の、翼のない竜種のような魔物』の姿だった。

　魔物が一度咆哮をあげれば、周囲の騎士たちは狂化を受けたように驚異的な戦闘能力を発揮し、戦闘の色を濃くしていく。件の魔物はそこでしばらく動きを止めてしまったが、それでも状況を打開するための策はなく。
　一縷の”可能性”に賭けるほか、ない状況となってしまう。

　それは、”敵陣に突撃し、中央部から発せられている高出力の魔力反応”を調査すること。
　騎士の襲撃をいなしつつ、死点より回り込み電撃作戦を行う為、強行軍を行っている道中、冒険者たちは騎士から発せられる奇妙な声を聞く。
　『　”たす、けてくれ”　』　『　”かいほう、してくれ”　』　『　”しにたくない”　』　『　”あつい、あつい”　』

　────助けを求めるその声に、惑わされずも突き進み、魔力反応のある箇所まで歩を進めれば、そこにはプチ失踪状態となっていたシオリと、見慣れない全身金色の謎の男の姿があった。

　男の名は『バリカタ』。素性は不明だが、今回の一件について事情を知っている様子。
　彼は多くのことを語った────（情報参照）
　
　赤子は”記憶”を持たない。ゆえに、”存在”を縛る為には、触媒となる誰かの記憶が必要であった。
　だからこそ、強度の高い記憶を持つ者が選ばれることとなり…　シオリは、駆け付けた仲間に過去の記憶を見られることとなった。

　故郷、家族、アーノルドとの思い出…　そして、魔剣の礎となる為、何度も精神の精錬の為に”殺害”された記憶。
　しかし炉に飛び込み、燃やされんとしていた”モノ”は途中から偽りの風景として、それが再生されていて───
　最後に立っていたのは、灰色の塵が積もった墓標の光景だった。
　
　絶対に失いたくない”感情”を仲間に託した後、消えゆく炎は最期に燃え上がり、”幻陽刻印”を遺すこととなる。

　回収し、現実に戻れば…初回のケースにしては上手くいきすぎだ、とバリカタは語る。
　シオリは自身から生まれ出でたそれを吸収し、本来ならば一つしか選べないものを、同時に二つ補強した…　という話なのだそうだ。

　それは、『信頼』と『喜び』。
　これこそが、決して消し去れない記憶の結末を描くに至った、自身を自身たらしめるルーツとなる感情だ。
　

　とにもかくにも、事態は沈静化した。
　怪物も、騎士の姿も消え去ったのだ、光と共に…


　次こそは、どうなるかわからない。
　だが、咎を背負わなければならないのなら、断罪を受け入れ、”奪って”生きることを、白日の元に決意した。

　矛盾と共に歩む、その行く末はどこへ────…

曰く、『悪い神を信仰してる連中が、昔々、人に”幻陽刻印”と呼ばれる”呪いの土壌”を埋め込んでいた。それは代々に渡って突然発現するもので、そうなるとその者にとってのルーツとも言える”記憶”と”感情”を喰らい尽くし、”落人狩り”と呼ばれる魂狩りの儀式ーー外で起こっていた異常事態のことだーーが始まる』のだという。
　今回の一件は、『感情はあるがロクな”記憶”も持たない赤子に発現してしまったことにより、呪いが暴発。そうして不完全な状態で始まった”落人狩り”だったが、その要たる怪物は、起動にまで至らなかった』という話であった。

　しかし、解呪の方法は簡単だという。
　バリカタが使う謎の力によって、呪いを発現させている、あるいは発現しかけている者の存在を縛り、”幻陽刻印”を取り除くだけだと。
　”幻陽刻印”を失った者はその者のルーツとなった”感情”と”記憶”を失い、人が変わったようになるのだという。しかし、何も命を奪おうとしているわけではないことは確かだ。

　それが許されるべき行為ではないことはさておき、…
　シオリは”幻陽刻印”に食らわれた魔力──即ち、呪いが埋め込まれていた人物にとってのルーツとなった”感情”を食らわなければ、生きていけないのだという。

　生まれつき、血に宿る”感情の炎”が、彼という器を焼き尽くさんとして燃え上がっているのだとか。
　しかし、”感情の虚”ーーいわゆる穴が大きいせいもあち、弱い炎は強い炎に飲み込まれ続け……、それが一つの却火となったとき、彼は燃え尽きてしまう。
　だからこそ、”幻陽刻印”による調律が必要で、
”予め弱い火(感情)を淘汰し、強い火(感情)を研ぎ澄ませる”ことによって、焼き尽くされることを遅らせよう、という話なのだとか。

”導きの都”ハーヴェス。
　水都の栄華届かぬスラム街”コムーネ地区”にて形成されていた『ディエゴの王国』と名乗るそれは、未登録市民たちを虐げ弾圧を繰り返していた。
　斯くして、非合法麻薬の製造と、その消費者として洗脳し、薬漬けにしていた狂王”ディエゴ”の蛮行を食い止めるため────また、彼に植えられた呪い”幻陽刻印”から抽出される魔力結晶の奪取を行う為、冒険者たちは玉座を目指していた。
　
　年に一度の、『豊穣祭』と呼ばれる薬物配給会の会場に乱入し、見事打倒した冒険者たちを待っていたのは、…
　引きずり降ろされた王を打倒し、打倒した彼らを”新たな王”と崇める洗脳された市民たちの視線。

　法も王もなき国に何を思っただろうか、きっと大部分は”仕事が終わった、後はしかるべきところに任せよう”と考えたかもしれない、だが────

　一人、親友の背を追って…手を差し伸べようとしたが
　苦悩し、手を出せなかった者がいた
　
　矛盾の中で、ただ一人、歩んできた親友の背を”恐れる”一方で、『結局はこれが現実なんだ』と”驚いていない”
　隣り合う感情ーー合わされば畏怖となるそれは、片方が欠落し、片方が補強されることによって、命を長らえることに成功する

　それから、ディエゴは獄中で自殺したことを聞いた
　これが最初に”奪った”第一例であり、導いた結末そのものである……。

　己の弱さに嘆き、弱い自分を罰する日を見上げてみれば
　泪に濡れた幻想が、現実を有耶無耶にしていたことに気が付くのだろう


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