さて、何を話せばいいだろうか？
人生と言うには、彼女はこの地に生を受けてから短すぎるだろう。
それでも語るとするならば……そうだね。

彼女が自分を認識したのは、見渡す限りの草原だった。
辺りに人影は無く建造物も見当たらない。
生まれたばかりの幼子が生きて行くには、不可能と言わざるえないだろう。
しかし、彼女には”お友達”が居た。
その”お友達”は、彼女の知らないことを何でも知っていた。それを教えてくれた。

多少の知識が付いた頃、彼女はラゴニアへと辿り着いた。
初めて見る人々、建造物、料理など……それは驚きの連続だっただろう。
しかし、それは良い面だけとは限らない。
物を得るにはお金が必要で、お金を得るには働かなければならない。
復興支援団とは言っても、タダ飯喰らいをいつまでも置いておくことは出来ないのだから。

身元不明の幼い子供だ。支援団としては、定期便で隣国へ送ろうと考えていた……あちらに行けば保護してくれる場所は心当たりがある。
しかし、それより先に彼女は行動してしまったんだ。
子供の行動力とは恐ろしいものだね。
彼女は単身で村を出た……それはお金が必要と言われたから、それだけの簡単な理由。
しかし、周りから見ればただの自殺と同義である。
結果的に、彼女は命の危機に瀕し、そこを冒険者に救われることになる。

それからしばらくは、命を救ってくれた冒険者と過ごした。
その冒険者が面倒を見ると言ったからだ。
生まれて初めて、人と深く関わる機会であり、自分と他人を理解した瞬間だった。

やがてその冒険者は、この地を去ることになる。
彼女は冒険者と……共に去る選択もあったんだろうね。
でもそうしなかった。何故だろうね？

それからはここで、冒険者として働いているよ。
もちろんきちんと適正試験は実施したさ。まさか受かるとは……誰も思わなかったんじゃないかな。
普段は、給仕として手伝いをしているんだけどね。
オーダーは……置いておいて、接客も……まぁ怒る利用者は見ないかな。


まぁ、君たちから見たら彼女はまだまだ子供なんだろう。
だから暖かく見守ってあげて欲しい。
僕の大切なお友達なんだ。