タングステンのフロウライト、ちっちゃいけど、重たいです。(なんか600kgくらいあるそうです)

大切な約束をしたことがある。
物心がついたときには独りだった。
溺れた事がある。

　わたしが生まれたのはふかーいふかいうみのそこ、ゆらゆらふわふわクラゲさん。びゅんびゅんざぶざぶマグロさん。
ぐるぐるたくさんイワシさん、そんなおさかなさんを眺めるのがわたしの日常。
　わたしの周りはいっつも青い、蒼くて、碧くて。とってもきれい、でも、ちょっと寂しいかな。
寂しい日々はずーっと続く、海の上に出れないかなって、ひっしにもがいても、上には上がれない。
もしかしたら、陸にぶつからないかなって、歩いてみたけど、方角が全然わからなくって、変な洞窟にでちゃった。
　でも、その洞窟でおじいちゃんドラゴンにあったんだ、おじいちゃんドラゴンとちょっとお話したんだ、そんで歩き続ければいつかはその身は日の光を浴びる事になるよって励ましてくれた、嬉しかった！　それならおじいちゃんも一緒に日の光って奴を浴びてみようって誘ったけど、おじいちゃんはもう動けないんだって、だから代わりに私がいつかここに戻って来ておじいちゃんに日の光を持って来てあげるって約束したんだ！　さぁ、今日こそ日の光を浴びれるかなぁ…………きゃわーーーーーー！

その日、船が引き挙げたのは網一杯の今日の夕飯ではなく、一人の鉱石で出来た少女であった。

　海で誕生してしまったフロウライト、今日まで独り魚と海を眺める日々を過ごしていたが。
厭になり、なんとなく歩き続けてみた、眠くなったら寝て、それから歩く、ずっとそんな日々を歩んだ。
繰り返す事10年、海底洞窟を抜けてドラゴンと出会い、いつかここに日の光を持って来ると約束した。
　そして約束した矢先、ナザルス海で漁をしていた漁船の網に引っかかり、引き揚げられる。
期せずして地上に出た彼女は、ドラゴンとの約束を果たすべく太陽に近づく為とエトワール号へ乗り込んだ。
　彼女の夢、それはかつての自分の様に独りで待つドラゴンへ、ありったけの「光」を浴びせる事。

「うーみーはーひろいーなー、おっきーなー、いやほんと、10年歩いても陸につかないんだよ、広いとおもうでしょ」
「はじめてまして！　私はフロウライト！　おなまえはない！　とりあえずふーちゃんでいいや、フロウライトのふーちゃん、あ、でも、フロウライトのろーちゃんってのもかーいーなー、どっちがいいと思う？」
「てーのひらをーたいよーにー、かかげてみーてーもー、あーかーいーちしーおはー、ながれてーなーいー」
「私、約束したんだ、ふかいふかい海の底、昔の私みたいに独りで待ってくれてるおじいちゃんに、太陽を見せるって！」

ふーちゃんが深海で旅をしていた時に拾ったり、市場や古本屋にたまに流れている、フロウライトの旅道中を綴った手記。
大抵の場合は旅で見た景色の感想や自分が思い綴った持論が書かれていたり、弟子や息子を育てていた時の事であったり。
海賊や元・軍人などと共に冒険した時や、あまりに妄想や空想にしか思えないような珍道中が描かれている。