好奇心がグラスランナーを殺す。
この世界で生きる者なら、1度は聞いた事があるであろう有名な一文。
好奇心旺盛、自由奔放、ララフィーラもその類に漏れることは無かった。
物心ついた時から親元を離れ、世界各地を放浪する生活を送っていた。
そんな生活が変わったのは、とある冒険者と出会ってからだった。
その冒険者は、旧文明の遺跡に夢を抱き、助けを求める人が居ればそれを助け。時には、役人の闇を暴き追われる身になった事もある。
最初はただの好奇心。しかしそれは何時しか、友情や信頼へと変わって行った。
そう、波乱万丈な彼女との旅が楽しかったのだ。
だからこそ、そんな生活がこれからも続く…そう思っていたんだ。

好奇心がグラスランナーを殺す。
生物が本能に逆らえない様に、ララフィーラも例外では無かった。
どうしてあの時、違う選択をしなかったのか。
どうしてあの時、誰かに確認することをしなかったのか。
どうしてあの時……彼女が来てしまったのか。
後悔……同族達も自分が死ぬ時、後悔をするのだろうか？
友人が死ぬ時も、後悔をするのだろうか？

「ラフィーは夢って無いの？」
「私はあるよ♪　いや、あるって言うよりは……」

夢、夢って何だろう。
どうして旅に出た？興味を抑えきれないから？それが本能だから？
分からない。
分からない。
分からない。

「ラフィー…私の夢……あなたに預けるね♪」
「もう、泣かないの。大丈夫……ラフィーなら見つけられる」

そうして1人の冒険者の物語が終わった。
探せばどこにでもある話。当人以外からすれば、手に取るに値しない小さな話だ。
ここから立ち上がるのか、それとも押しつぶされて殻に籠るのか。
それも自由。自由気ままなグラスランナーが、最も愛する言葉だろう。

「私……あなたの夢、1度も聞いたこと無いのに……無理だよ」


それから90年。とある飛空艇乗り場に1人の女性の姿があった。
世界を巡り、文化を伝承を、歌と共に各地へ広げる。
ギルドに所属し、依頼を受ける。人の為、世の中の為、時には名誉の為に働く冒険者。

否。私は、放浪者(ヴァグランツ)。
何にも縛られず、自由に生きる放浪者。
いつか見つけなければならない、あの約束を果たすために、星の空へと飛び立つ―――