わたくしの親？…そうですか。ええ、登録するには細かい所までわからないと信用されないのは覚悟しておりますからね。お話してさしあげます。申し上げた通りわたくしはラルヴァで、父親がノスフェラトゥ。母親はエルフ…だったのかしら。どうもよくわかりませんでしたわ。人里離れて隠棲していた母を…おそらく生まれはそれなりに良い家柄だったと思います、ですが私がそのことについて聞きますと、どうも二度と帰れない場所を懐かしんでいる風がありました…たまたま父が夜の散歩で見かけて、月下香の花を摘んでいるその美しさに心を奪われただけの事だそうですわ。それは本当だったのでしょうね、母の眼はいつだって正気そのものでしたから。どうも、今考えると、当人達は少なくとも本気で愛し合っていた節もあります。父の方も芸術馬鹿の気があるようでしたし。

え、もう普段通りに話していいと？……ああ、しっかり敷地内の出来事に目と耳を働かせてらっしゃるのね。そう言うかたの纏め上げるギルドの方がかえって安心出来ていいわ。さて、で、父親をどう思っているか？変なことを聞くのね。

そうね、生理的に嫌いよ。ラルヴァって種族的にそう言うものでしょう？でも、憎んではいないわ。理由があればともかく、嫌いなものと言うだけで殺意を抱けるほど子供の覚えはない。

それに…赤ん坊の私に触る時、向こうにしてみればペットを見るような感覚だったと思うのだけれど、それでもね。あの恐る恐ると言う感じの、大人のノスフェラトゥの方が赤ん坊を怖がってる、物珍しそうで間抜けな顔を私は覚えてるの。嫌いはしても、憎むまでは出来ないわね。

さあ、これで全部よ。信じて頂けるなら嘘偽りはゼロ。人族判定の試験結果はいかがかしらね？